車載バスバーの設計と高度化に求められる材料・技術の最新動向
■本テキストの主題および状況
★電動化の進展とともに、バスバーをはじめとする高電圧部品の信頼性向上と、カーボンニュートラルへの対応が求められている。
■注目ポイント
★様々なインバータの実装構造を実例をもとに紹介し、DC入力ライン、AC出力ラインとしてのバスバーの役割を解説するとともに将来的な役割について考えていく!
★エンジニアリングプラスチックが自動車部品にどのように活用されているか紹介し、最新のxEV向けバスバー用エンプラのトレンドや、新たなニーズに応える材料技術について解説!
★植物由来の機能性樹脂Rilsan® PA11のその高い耐薬品性・柔軟性・成形加工性を活かした自動車用途での展開事例を紹介!
★IH誘導加熱によるバスバーの絶縁塗装技術の特性や生産性向上、環境負荷低減の観点から自動車業界への展開の可能性について解説!
執筆者
【講師】
第1部 技術士 (総合技術監理部門、電気電子部門)(元株式会社 デンソー 半導体基盤技術開発部 担当部長) 神谷 有弘 氏
第2部 ポリプラスチックス株式会社 研究開発本部 テクニカルソリューションセンター グループリーダー 寺岡 尚信 氏
第3部 アルケマ株式会社 機能性樹脂事業部 日本 トランスポーテーション事業担当 ビジネスマネージャー 勝亦 伸之 氏
第4部 Mipox株式会社 環境ソリューション事業部 中島 健也 氏
目次
【第1講】
車載インバータの実装技術とバスバーの設計事例
【講師】
技術士 (総合技術監理部門、電気電子部門)(元株式会社 デンソー 半導体基盤技術開発部 担当部長) 神谷 有弘 氏
【主旨】
車両の電動(特にEV)化が進む中、重要な役割を果たすのがインバータです。車両におけるプラットフォーム(PF)設計が当たり前となり、各車両のPF設計に沿ったインバータの設計がなされています。本テキストではまず、様々なインバータの実装構造を実例をもとに紹介しながら、そこでDC入力ラインあるいはAC出力(モータへの接続)ラインとしてのバスバーの役割を確認します。さらに、最近進められている車両価値向上に対応したPF設計に沿ったインバータの事例を基に、バスバーの将来に向かって果たす役割を考察します。
【プログラム】
1.カーエレクトロニクスの概要
1.1 クルマ社会を取り巻く課題
1.2 プラットフォーム(PF)設計への対応
1.3 環境対応(電動化)
2.車載電子機器と実装技術への要求
2.1 車載電子製品へのニーズ
2.2 小型化が求められる背景
2.3 小型化と熱設計の考え方
3.パワーデバイス・モジュールの実装設計
3.1 パワーデバイスの放熱性向上の動向
3.2 両面冷却方式
4.インバータにおける実装構造とバスバーの役割
4.1 インバータの放熱設計の分類
4.2 事例:空冷の小型インバータにおけるバスバーの役割
4.3 事例:両面冷却のインバータにおけるバスバーの役割
4.4 事例:片面直接冷却のインバータにおけるバスバーの設計
4.5 事例:両面直接冷却におけるバスバーの設計
5.最近のインバータにける実装構造の動向
5.1 軽量化を実現したインバータとバスバーの使い方
5.2 小型薄型化実現のためのバスバー設計の工夫
6.将来動向
6.1 PF設計とインバータの関係
6.2 EV用パワートレインに求められる将来動向
6.3 実装技術と車両の付加価値向上を目指した製品開発
【キーワード】
車載インバータ、実装技術、バスバー
【ポイント】
車載パワーエレクトロニクス製品の実装技術(熱設計を含む)に関する基礎知識が習得できます。その事例として、バスバーを中心に解説します。
【習得できる知識】
車載インバータの小型設計の考え方、それに必要なバスバーの役割を具体例から理解する。バスバーは、電気的な接続だけでなく、熱設計の面でもその役割を果たしていることを考慮した、インバータ内のバスバー設計を習得できる。
【第2講】
xEV向けバスバー絶縁用の熱可塑性樹脂
【講師】
ポリプラスチックス株式会社 研究開発本部 テクニカルソリューションセンター グループリーダー 寺岡 尚信 氏
【主旨】
地球環境問題への対応として、自動車産業ではエンジン車からxEV(電動車)へのシフトが急速に進んでいます。xEVの普及に伴い、高電圧・高電流化が進み、それに対応する絶縁部材には、より高度な性能が求められるようになっています。
本テキストでは、エンジニアリングプラスチック(以下、エンプラ)が自動車部品にどのように活用されているかの全体像を紹介するとともに、最新のxEV向けバスバー用エンプラのトレンドや、新たなニーズに応える材料技術について解説します。
【プログラム】
1.エンプラとは?
2.エンプラ採用の歴史
3.xEV向けエンプラのトレンド
4.バスバーに求められる絶縁材料の特性
5.用途別のバスバー絶縁材料
5-1. パワーコントロールユニット向けバスバー
5-2. E-Axle向けバスバー
5-3. リチウムイオンバッテリー向けバスバー
【キーワード】
xEV、バスバー、エンジニアリングプラスチック、PBT、PPS、PA12、高電圧、絶縁樹脂、パワーコントロールユニット、E-Axle、リチウムイオンバッテリー、熱暴走、高耐熱、難燃性、耐トラッキング性、耐ヒートショック性、気密性、環境対応、モノマテリアル、金属-樹脂の接合技術
【ポイント】
このテキストでは、単なる材料紹介にとどまらず、xEVの主要構成部品(PCU、E-Axle、バッテリー)ごとの用途別要求特性に焦点を当て、実用的かつ技術的な視点からエンプラの可能性を深掘りします。材料選定に関わる技術者や開発担当者にとって、最新の市場動向と技術課題の両面を理解できる貴重な機会となります。
【習得できる知識】
・自動車分野におけるエンプラの採用事例
・バスバーに求められる絶縁材料の性能
・バスバーの用途別材料選定のポイント
【第3講】
ヒマシ油由来ポリアミドの自動車用途への展開
【講師】
アルケマ株式会社 機能性樹脂事業部 日本 トランスポーテーション事業担当 ビジネスマネージャー 勝亦 伸之 氏
【主旨】
昨今、電動化の進展とともに、バスバーをはじめとする高電圧部品の信頼性向上と、カーボンニュートラルへの対応が求められています。本テキストでは、70年以上の実績を持つ植物由来の機能性樹脂Rilsan® PA11に着目し、その高い耐薬品性・柔軟性・成形加工性を活かした自動車用途での展開事例をご紹介します。PA11は、再生可能資源であるヒマシ油を原料としながら、高機能材料としての性能を両立。最新のELV指令案を踏まえ、PA11メーカーであるアルケマのカーボンニュートラルに向けた取り組みとともに、次世代モビリティにおける材料選定のヒントをお届けします。
【プログラム】
1.はじめに
1-1 フランスの樹脂メーカー、アルケマの会社概要とグローバル展開
1-2 最新の欧州ELV指令”案”に代表されるバイオマス材料への関心
2.ヒマシ油由来Rilsan® PA11
2-1 Advanced: 機能性樹脂としての歴史と実績
2-2 Bio-based: 持続可能性に優れたトウゴマという植物
2-3 Circular: リサイクルによる更なる持続可能性の進化
3.PA11の自動車用途への展開
3-1 様々な成形方法の適用(射出、押出、粉体塗装)
3-2 PA11の優位性
3-3 バスバーをはじめとする最新の自動車用途での採用実績
【キーワード】
カーボンニュートラル、バイオマス、リサイクル、ヒマシ油、エンプラ、軽量化、絶縁材料、ポリアミド、自動車用途、ELV指令
【ポイント】
PA11の材料特性と自動車部品への応用、バスバー絶縁など最新事例を通じて、環境対応型設計のヒントが得られます。
【習得できる知識】
•欧州の樹脂メーカーであるアルケマのサステナビリティ戦略
-カーボンフットプリント削減、リサイクル対応、Pragatiプログラム
•最新のELV規則案(2025年改正案)の概要と影響
-再生材使用義務(20%以上)、バイオプラスチックの適用範囲拡大
-自動車設計段階からの循環性確保と材料選定への影響
•植物由来ポリマー「PA11」の基礎と応用
-ヒマシ油由来のPA11の特性、70年にわたる自動車用途での実績
-軽量性・耐薬品性・耐衝撃性などの高機能性
•PA11の自動車分野での最新適用事例
-冷却ライン、水素タンクライナー、バスバー絶縁被覆などの具体例
-電動化・水素化に対応する材料選定の視点
【第4講】
IH誘導加熱によるバスバーの絶縁塗装
【講師】
Mipox株式会社 環境ソリューション事業部 中島 健也 氏
【主旨】
IH誘導加熱によるバスバーの絶縁塗装技術は、均一で効率的な加熱と省エネルギー効果を兼ね備えたプロセスです。本テキストでは、その技術的特徴とともに、生産性向上や環境負荷低減の観点から自動車業界への展開の可能性について解説します。
【プログラム】
1.IH誘導加熱の技術概要
2.バスバー絶縁塗装におけるIH加熱の利点
3.環境負荷低減と省エネルギー効果
4.実用事例と今後の展望