AT202302271:自己修復材料の基礎と今後の展望、ゲル材料の最新の研究・開発事例

★種々の超分子結合と高分子構造を利用した自己修復ヒドロゲルについて、関連する分野や今後の展望について紹介!

★自己修復性を持った新しいイオンゲル材料に関して、自己修復性メカニズムや力学特性、応用可能性に関して詳細を解説!

※このテキストは2023年2月27日に実施したセミナー資料です


番号
AT202302271
発行年月
2023/02/27
体裁
A4判, 84ページ
フォーマット
紙版
定価
27,500 円(本体25,000円+消費税、送料込)
冊数:

執筆者

第1部 宇都宮大学 工学部 准教授 博士(理学) 為末 真吾 氏

第2部 (国研)物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 独立研究者 玉手 亮多氏

第3部 ユシロ化学工業(株) 研究開発部 鈴木 智大 氏

目次

第1部 物質内への超分子結合の組込みによる自己修復マテリアルの開発
講師:宇都宮大学 工学部 准教授 博士(理学) 為末 真吾 氏

【経歴】
2011年 大阪大学大学院理学研究科 修了
2011年-2012年 独立行政法人理化学研究所 特別研究員
2013年-2017年 新潟大学工学部 助教
2017年-2022年 宇都宮大学工学部 助教(研究室主催者)
2022年-現在に至る 宇都宮大学工学部 准教授(研究室主催者)

【著作】
Reversing Redox Responsiveness of Hydrogels due to Supramolecular Interactions by Utilizing Double-Network Structures, ACS Applied Materials & Interfaces, 2018, vol.10 (No.32), pp27381–27390. など。

【受賞】
International Conference on Science and Technology of Synthetic Metals 2010 (ICSM 2010), Young Researcher Poster Award, 2010 など。

【主旨】
 様々な高分子低分子を利用して、傷を自動的に修復する自己修復材料が近年実用化に近い段階まで報告されてきた。過去に自己修復材料に用いられてきた超分子結合などを知ることで必要な場面に適した機能を持った自己修復材料を作り出すことができる様になる。本講演では種々の超分子結合と高分子構造を利用した自己修復ヒドロゲルについて、関連する分野とともに具体的に紹介する。また、今後の自己修復ゲルの展望について紹介する。

【キーワード】
自己修復材料、ソフトマテリアル

【ポイント】
講演者は過去、複数の超分子化学の分野の世界的に著名な研究者のもとで研究を行い、超分子化学や高分子化学に関する研究経験を積んできた。この経験を利用して、現在は超分子結合を利用した自己修復材料や接着材料の研究を行っている。今回は、これまでの経験・知識を基に様々な超分子結合を利用した自己修復材料の紹介を行う。

【習得できる知識】
超分子結合などの可逆的な結合の知識、それを元にした自己修復材料を含む材料開発の基礎となる知識

【目次】
1.自己修復材料とは?

2.化学結合などを用いた自己修復材料
 2-1 カプセルを用いた自己修復材料と仕組み                                        
 2-2 動的共有結合を利用した自己修復材料と仕組み

3.物理結合を用いた自己修復材料                                                                                                                                                                                                                          
 3-1 静電相互作用を利用した自己修復材料と仕組み                                                           
 3-2 配位結合を利用した自己修復材料と仕組み                                                            
 3-3 ホストゲスト相互作用を利用した自己修復材料と仕組み                     
 3-4 水素結合を利用した自己修復材料と仕組み
 3-5 その他の自己修復材料

4.将来の自己修復材料の展望とまとめ



第2部 自己修復性イオンゲルの設計とその自己修復挙動、特性
講師:(国研)物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 独立研究者 玉手 亮多 氏

【経歴】
2002年4月-2006年3月 京都大学 工学部 物理工学科
2006年4月-2008年3月 京都大学 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 修士課程
2008年4月-2013年6月 株式会社ブリヂストン
2013年10月-2016年9月 東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 博士課程
2016年10月-2017年3月 東京大学 大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 博士研究員
2017年4月-2018年12月 横浜国立大学大学院 工学研究院 博士研究員
2019年1月-現在 物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 独立研究者
2021年10月-現在 JSTさきがけ研究員(兼任)

【著作】
1.玉手亮多、上山祐史、上木岳士 「第12章ゲル 3イオン液体を用いた自己修復性ソフトマテリアル」イオン液体の実用展開へ向けた最新動向, 株式会社シーエムシー出版, 2022.
2.玉手亮多 「第12節 イオン液体中で発現する超分子結合を利用した自己修復性ソフトマテリアル」自己修復材料, 自己組織化, 形状記憶材料の開発と応用事例, 技術情報協会, 2020.
3.上木岳士、小野田実真、玉手亮多、吉田亮「第16章 ブロック共重合体の時空間構造化によるバイオミメティクス材料」ブロック共重合体の構造設計と応用展開, 株式会社シーエムシー出版, 2018.
4.橋本慧, 玉手亮多, 渡邉正義「応用編 第1章 第2節 イオン液体を溶媒とする温度/光応答性高分子材料」刺激応答性高分子ハンドブック, 株式会社エヌ・ティー・エス, 2018.

【受賞】
2020年 高分子研究奨励賞
2019年 第36回井上研究奨励賞
2017年 東京大学総長賞

【主旨】
 カチオンとアニオンのみから構成され室温で液体となる「イオン液体」は、高いイオン伝導性、不揮発性、不燃性、熱・電気化学的安定性など従来の分子性液体にない優れた性質を示す。
 本講演ではイオン液体の特性と応用、更に高分子とイオン液体の複合化により得られるソフトマテリアル「イオンゲル」に関して概説する。特に近年我々が開発した、化学的アプローチおよび物理的アプローチを利用した自己修復性を持った新しいイオンゲル材料に関して、自己修復性メカニズムや力学特性、応用可能性に関して詳細を解説する。

【キーワード】
イオン液体、イオンゲル、自己修復

【ポイント】
イオン液体およびイオン液体を溶媒とするゲル(イオンゲル)の基礎物性・応用事例に関して概説する。さらに、イオンゲルに自己修復性・リサイクル性などの機能を付与する試みに関して紹介する。

【習得できる知識】
イオン液体・イオンゲル・自己修復高分子材料に関する基礎知識・最近の研究動向

【目次】
1.イオン液体とは
 1.1 イオン液体の性質
 1.2 イオン液体の分類
 1.3 イオン液体の応用

2.イオン液体と高分子の複合化によるソフトマテリアル創製
 2.1 イオン液体中の高分子
 2.2 イオンゲル
 2.3 イオンゲルの高機能化

3.自己修復性イオンゲル
 3.1 化学的アプローチを利用した自己修復性イオンゲル
 3.2 物理的アプローチを利用した自己修復性イオンゲル
 3.3 今後の展望



第3部 自己修復性ポリマーゲルの開発-ウィザードゲルⓇの紹介-
講師:ユシロ化学工業(株) 研究開発部 鈴木 智大 氏

【経歴】
2015年4月:ユシロ化学工業株式会社 入社 
商品技術部にて主に金属加工の洗浄剤,さび止め油を担当
2018年4月:研究開発部 金属加工油剤関連の研究に従事
2019年4月~現在:同部・主任 自己修復材料の研究に従事

【主旨】
 電子デバイスや医療機器、生活周辺製品など、産業界の技術革新に伴い、それらを支える高分子素材(構造材・接着剤・塗膜材・周辺部材等)には、高強度・高靭性・高耐久性・形状記憶性など更なる性能向上や新機能付与が求められる。SDGs等の世界動向からも高分子材料の長寿命化・メンテナンスフリー化などは社会的急務である。これらの性能を満たすには、新しい分子・材料設計が必要であり、近年、高分子鎖ネットワークの可逆性架橋化/可動性架橋化といったアプローチが盛んである。ユシロ化学工業では、ホスト分子、ゲスト分子による可逆的超分子架橋を利用して自己修復性の発現や力学特性の著しい向上等を実現した新材料を開発し、社会実装を進めている。本講演では、これら開発した新材料の基礎・開発経緯・新展開などを紹介する。

【キーワード】
自己修復材料、超分子化学、強靭化材料、機能性向上、高分子材料、超分子材料、ゲル、エラストマー、接着剤、塗膜、ポリマー添加剤、ホスト分子、ゲスト分子

【ポイント】
弊社では、ホスト-ゲストの化学を汎用材料に適用することで、自己修復材料、機能向上添加剤を開発してきた。来たる技術革新やSDGs社会を迎えるにあたり、これらのポリマー材料の実装化と今後について、実例を交え解説する。

【習得できる知識】
ホスト-ゲスト相互作用等の分子間力を駆使したポリマー架橋構造(可逆的架橋・可動性架橋)の汎用高分子材料に関する基礎的知識と実装化事例

【目次】
1.序論~高分子材料について
 1-1 ポリマー材料の製造と重合反応
 1-2 共有結合による架橋高分子材料
 1-3 分子間相互作用を利用した機能化

2.超分子材料 ホスト分子、ゲスト分子の相互作用による架橋構造
 2-1 可逆性架橋構造
 2-2 可動性架橋構造
 2-3 ホストゲスト架橋の複合ネットワーク化
 2-4 異種材料との複合化

3.ユシロの取り組み~ホスト-ゲスト相互作用を用いた自己修復・強靭化材料への展開
 3-1 ホスト分子、ゲスト分子の量産化
 3-2 強くて乾かない自己修復性ポリマーゲル ウィザードゲル®
 3-3 無溶媒タイプ 自己修復性エラストマー ウィザードエラストマー®
 3-4 ポリマー添加剤の紹介