AT202302272:次世代二次電池材料に向けた正負極バインダーの開発・設計・評価と水系・Si負極等への展開
★シリコン負極リチウムイオン電池をはじめとする次世代二次電池について材料という切り口から、それぞれの電池の特徴、クリアすべき問題点、ターゲット、市場性、拡大の可能性などを説明!
★正極・負極の水系バインダーの問題点とその解決法という形で一つ一つ説明、水系バインダーの必要性と今後の将来性を感じてもらえるような内容をご紹介!
★高分子バインダー材料設計及び負極活物質設計の両面から合理的で戦略的な負極デザイン例を解説!
※このテキストは2023年2月27日に実施したセミナー資料です
執筆者
第2部 神奈川大学 工学部 物質生命化学科 教授 松本 太 氏
第3部 北陸先端科学技術大学院大学 教授 融合科学共同専攻長 博士(工学) 松見 紀佳 氏
目次
第1講 次世代二次電池の最新技術動向と電極材料への期待とバインダー
講師:株式会社スズキ・マテリアル・テクノロジー・アンド・コンサルティング 代表取締役社長 技術コンサルタント (元クレハ、アルケマ)鈴木 孝典 氏
【著作】
最新著作:『正極用スタンダードバインダーとしてのPVDF』 P255~P265 『リチウムイオン電池用バインダーと全固体電池用バインダーとの比較』 P266~P274, 30, Jun., 2022, 二次電池の材料に関する最新技術開発 (株)技術情報協会
【経歴】
1986年4月 株式会社クレハ(当時:クレハ化学工業株式会社)入社 総合研究所 ポリフェニレンスルフィド(PPS)重合条件の検討、該社初の量産プラントの立ち上げスタッフとして勤務
1989年4月 ポリプラスチックス株式会社(出向) フォートロン開発部 PPS樹脂市場開発・技術サポート
1994年4月 総合研究所 加工技術研究所 射出・押出成型用コンパウンド研究
1994年4月 KPS部 PPS市場開発、PPS樹脂・コンパウンド・機能性フィルム市場開発
1997年4月 機能樹脂部(アカウントマネージャー) フッ化ビニリデン・電池材料・PPS樹脂材料開発・市場開発
2001年4月 機能材料部 (フッ素樹脂担当マネージャー) 電池材料用途フッ化ビニリデンの材料開発、営業・市場開発
2005年4月 大阪支店 (機能材料部長) ポリフェニレンスルフィド、フッ化ビニリデン、カーボンファイバー、特殊活性炭、炭素繊維系断熱材、制電樹脂、光学樹脂、電池向けフッ化ビニリデンバインダーの市場開発、営業、技術サポート管掌。材料開発支援。 部署売上:50億円/年
2011年4年 株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン出向(開発担当部長) 電池向けフッ化ビニリデンバインダー・負極用炭素材料の開発。テクニカルサポート。品質保証部長(兼務)ISO9001取得プロジェクトで品質保証システムの構築指揮。(2012年12月認証)
2012年9年 株式会社クレハ 退職
2012年10年 アルケマ株式会社 入社 (2018/12/31退社) 京都テクニカルサービスセンター(シニアディベロップメントマネージャー)
2020年3月 株式会社スズキ・マテリアル・テクノロジー・アンド・コンサルティング設立 現在、複数社との顧問契約でサポート中
【キーワード】
バインダー、リチウムイオン電池、PVDF、SBR、CMC、全固体電池、半固体電池、リチウム硫黄電池、金属硫黄電池、リチウム空気電池、金属空気電池、ナトリウムイオン電池、リチウム金属負極、ウエットプロセス、硫黄系固体電解質、酸化物系固体電解質、樹脂系固体電解質、次世代二次電池、シリコン負極、Si系負極
【ポイント】
25年以上にわたるリチウムイオン電池市場、バインダーへの関わりを通し、次世代二次電池について材料という切り口から、それぞれの電池の特徴、クリアすべき問題点、ターゲット、市場性、拡大の可能性などを説明します。また今回のメインテーマのシリコン負極用バインダーについても簡単に触れておきます。
【習得できる知識】
次世代二次電池の概要、材料、特徴、問題点、市場性の考え方、各種電池のバインダーに対する要求特性など
【趣旨】
Si系負極が期待されている背景には、既に現行液系リチウムイオン電池の容量が限界に近づいているという理由がある。当然、全固体電池を筆頭に、幾つかの次世代二次電池が「ポスト・リチウムイオン電池」として期待されている。数多くのスタートアップや研究機関が「これこそが次世代電池の本命」とアナウンスし、投資熱は日々高まっている。しかし、本当に次世代電池が液系リチウムイオン電池を代替し、市場を席巻するのかという雰囲気がある。そこで、それぞれの次世代二次電池について基本的な理解をすることで、その疑問にある程度答えを見いだすことが出来ると考えている。そんな中で現実解の一つとして、シリコン系(Si系)負極について触れておきたい。また、私の専門であるバインダーが各電池系にどう関わるかについても説明していきたい。
【目次】
1. 次世代二次電池が期待されるわけ
1-1 リチウムイオン電池とはどんな電池か?
1-2 欠点としてあげられるポイント
1-3 さらなる性能向上を期待
2. 次世代二次電池の候補とその材料
2-1 リチウム金属負極電池
2-2 全固体電池
2-3 ナトリウムイオン電池
2-4 リチウム硫黄電池
2-5 リチウム空気電池
3. 本当に「次世代二次電池」は来るのか?
3-1 ロードマップ
3-2 かなりイメージと違う予測
4. 次世代電池のバインダーについて
4-1 リチウム金属負極電池のバインダー
4-2 Si系負極電池のバインダー
4-3 全固体電池のバインダー
4-4 リチウム硫黄電池のバインダー
4-5 リチウム空気電池のバインダー
4-6 ナトリウムイオン電池のバインダー
5. まとめ
第2講 リチウムイオン二次電池電極用バインダーの調製と水系バインダー
講師: 神奈川大学 工学部 物質生命化学科 教授 松本 太 氏
【著作】
・ 松本 太, 郡司貴雄, 化学の魅力Ⅲ エネルギーと電池 神奈川大学入門テキストシリーズ, 御茶の水書房, ISBNコード 9784275021298 (2020).
・ Futoshi Matsumoto, Takao Gunji, Water in Lithium-Ion Batteries (Springer Brief in Energy), Springer, ISBN-10 : 9811687854, ISBN-13 : 978-9811687853 (2022).
・ 大坂 武男, 岡島 武義, 松本 太, 北村 房男 (共訳), 「電気化学 基礎と応用」, 東京化学同人,ISBN 9784807908479 (2015).
【経歴】
1986年3月 栃木県立黒磯高等学校卒業
1997年3月 東京工業大学大学院総合理工学研究科電子化学専攻 博士課程修了 (理学博士)
1997年4月 日本学術振興会特別博士研究員
1999年4月 東京理科大学理工学部工業化学科助手
2002年9月 (財)神奈川科学技術アカデミー益田「ナノホールアレー」プロジェクト副研究室長
2005年4月 Cornell University, Dept. of Chem. and Chemical Biology, Research Associate (Ithaca, New York,USA)
2008年8月 Wildcat Discovery Technologies, Inc., (San Diego, California, USA)
2010年4月 神奈川大学工学部物質生命化学科 准教授
2016年4月 神奈川大学工学部物質生命化学科 教授 (在職中)
【キーワード】
リチウムイオン電池、水系バインダー、カルボキシメチルセルロース
【習得できる知識】
リチウムイオン二次電池(LIB)におけるバインダーの重要性
新しいバインダーによるLIBの性能の向上
【主旨】
これまで私たちが行ってきた正極用水系バインダーの開発、および水系バインダー適用のための集電体表面の処理、正極材料のコーティングなど、水系バインダーの問題点とその解決法という形で、一つ一つ説明していき、水系バインダーの必要性と今後の将来性を感じてもらえるような内容をご紹介したいと思います。
【目次】
1.リチムイオン二次電池におけるバインダーの機能と役割
1-1 バインダーの持つべき役割
2.バインダーの分散法と電極の成膜方法
3. 負極用バインダー
3-1 水系バインダーの種類
3-2 水系バインダーと溶媒系バインダーの電池性能の比較
3-3 カルボキシメチルセルロース(CMC)バインダーについて
3-4 アクリル酸バインダーについて
4. 正極用バインダー
4-1 水系バインダーの種類
4-2 水系バインダーと溶媒系バインダーの電池性能の比較
4-3 カルボキシメチルセルロース(CMC)バインダーについて
4-4 CMCバインダーとLi過剰固溶体正極材料の組み合わせについて
5. ナノ構造を利用した正、負極用バインダー
6. 研究動向と今後の課題
第3講 リチウムイオン二次電池用シリコン系負極の高度安定化を指向したバインダー・活物質設計
講師: 北陸先端科学技術大学院大学 教授 融合科学共同専攻長 博士(工学) 松見 紀佳 氏
【経歴】
2010 - : 北陸先端科学技術大学院大学 , 教授
2006 - 2010 : 名古屋大学 大学院生命農学研究科 応用分子生命科学専攻 , 准教授
2004 - 2006 : 東京農工大学大学院共生科学技術研究部 助手
2000 - 2004 : 東京農工大学工学部生命工学科 助手
1999 - 2000 : 日本学術振興会特別研究員(京都大学大学院工学研究科)
【受賞】
・ Padmashri Dr. Baldev Raj FiMPART Distinguished Researcher Award , Noriyoshi Matsumi , FiMPART , 2019
・ 田中貴金属MMS賞 , 田中ホールディングス株式会社 , 2015
・ Polymer Journal 論文賞―日本ゼオン賞 , 高分子学会 , 2010
・高分子研究奨励賞, 高分子学会, 2006
【キーワード】
リチウムイオン二次電池・シリコン系負極・機能性高分子・高分子合成・共役系高分子・自己修復性高分子・無機高分子・シリコンカーバイド・シリコンオキシカーバイド
【趣旨】
LIBにおけるシリコン負極が抱える問題点の理解をもとに、高分子バインダー材料設計及び負極活物質設計の両面から合理的で戦略的な負極デザイン例を解説する。
【目次】
1.LIBのシリコン系負極における一般的課題
2.課題解決に向けた特異的なバインダー材料設計への戦略
3.BIAN型共役系高分子バインダーの設計及び適用例
4.自己修復型高分子の設計及び適用例
5.シリコンカーバイド系活物質の設計及び適用例
6.マイクロシリコンへのシリコンオキシカーバイド修飾とその効果