溶解パラメーターから理解する高分子の溶解性 ~熱力学に基づく実践的アプローチ~
■本テキストの主題および状況
★有機化合物や高分子の溶解性評価にはSP値が簡便に使われるが、その理論は熱力学に基づくHildebrandの溶解パラメーターに由来する。Hansenの拡張には信頼性の課題があり、Flory-Hugginsのカイパラメーターは予測困難で実用性に限界がある。これらを踏まえ、SP値の意味と適用限界を熱力学的に解説する。
■注目ポイント
★熱力学的に考えた非電解質溶液について学習できる!
★溶解パラメーターについて学習できる!
★ポリマーと溶媒の系について学習できる!
★ポリマーの溶液の実際の例について学習できる!
★ポリマー目的の系について学習、習得できる!
執筆者
金沢工業大学 名誉教授(金沢高分子ラボ 代表) 小川 俊夫 氏
目次
【主旨】
有機化合物や高分子材料を扱う時、溶媒に溶かすという作業は頻繁に発生する。どんな溶媒を使ったら良いか悩むことが多い。最も簡単な方法は溶解パラメーター(SP値)を使って溶媒を探すことである。この方法は極めて簡単であるが、ここではSP値の意味とその利用の限界について解説する。
SP値は熱力学を基礎とした有機化合物の溶液論から生まれたもので、米国のHildebrand によって主に確立された。その後、デンマークのHansenによって独自の展開がなされているが、信頼性に若干問題がある。また、高分子材料の溶解性を記述するのに、米国のFlory-Hugginsがカイパラメーターという量を導入した。これは統計熱力学的基礎から出発しているが、実用に当たっては、カイパラメーターを前もって予測できない欠点があり、簡単には利用できない。これらの問題を含めて、SP値について熱力学的観点から詳しく解説する。
【プログラム】
1. 熱力学的に考えた非電解質溶液
1-1. 熱力学的基礎
1-2. 理想溶液
1-3. 正則溶液
1-4. 高分子溶液(溶媒:高分子、高分子同士)
2. 溶解パラメーター
2-1. 溶解パラメーターの名称
2-2. 溶解パラメーターの導出
2-3. 溶解パラメーターの温度依存性
2-4. 実験的な求め方
2-5-1. 原則からの求め方
2-5-2. 溶媒吸収後の力学的による方法
2-5-3. 濁度法
2-5-4. 溶液粘度法
2-6-.計算による求め方
2-6-1. モル引力定数による方法
2-7. 混合溶媒あるいは共重合体の溶解パラメータ
2-8. Hansenの溶解パラメーター
3. ポリマーと溶媒の系
3-1. 長い分子の特徴
3-2. Flory-Hugginsの溶液論
3-3. 結晶性と非結晶性
3-4. 非結晶性固体(ポリマー)と溶媒の相平衝
3-5. 結晶性固体(ポリマー)と溶媒の相平衡
4. ポリマーの溶媒への溶解の実例
4-1. ポリスチレンとトルエン等の系
4-2. ポリイソプレンとジイソプチレンの系
4-3. ポリカーボネートと酢酸 エチルの系
4-4. ポリスルホンとテトラリンの系
5. ポリマー同士の系
5-1. ポリマー同士の相溶性
5-2. Flory-Huggins溶液論と正則溶液論の比較
5-3. エントロピー項の比較
5-4. ポリマー同士の臨界溶解温度
5-5. 相溶性の確認方
5-5-1. 融点降下(結晶性ポリマー)の利用
5-5-2. ガラス転移点の挙動
5-5-3. 相互溶解熱(混合熱)の測定
5-5-4. 混合の体積変化
【キーワード】
低分子と高分子、溶解パラメーター(SP値)、熱力学、発熱、吸熱、、体積変化、カイパラメーター、Hildebrand, Hansen,Flory-Huggins
【テキストのポイント】
溶解パラメーターは溶媒を選択するのに極めて便利な方法であり、現在の所これ以上の方法はない。ただ、これには限界があり、結晶性の材料や溶媒と極端な相互作用をすると想定される分子構造を持った高分子には単純には適用できないことを認識しておく必要がある。